中小企業に対する優遇税制の改正
従来は資本金のみで中小企業に対する各種優遇措置の適用の有無を判定していましたが、平成29年度の税制改正において所得水準による判定も加わり、優遇措置の適用対象となる法人の範囲が絞られることになりました。
中小企業に対する従来の優遇措置は、その法人の資本金の金額が1億円以下であれば適用されるという、いわゆる資本金基準により判定を行うこととされています。
平成29年度の税制改正では、資本金基準に加えて所得基準も導入されることになりました。具体的には、過去3年間の平均所得金額が15
億円を超える場合には、一部の優遇措置の適用が受けられなくなります。
背景には、中小企業に対する優遇措置は、中小企業は大企業に比べて財務基盤が脆弱であると考えられるから設けられている制度であり、大
企業並みの多額の所得を得ているにもかかわらず資本金が1億円以下であるために優遇措置を受けている企業が存在していることが近年問
題視されていることがあります。
過去3年間の平均所得が15億円を超える中小企業について、平成31年4月1日以後開始事業年度より優遇措置の適用が受けられなくなる主な制度は、以下の通りです。
(1)中小法人等に対する優遇措置
① 軽減税率の適用
年800万円以下の所得について法人税法で19%に軽減され、租税特別措置法でさらに15%に軽減されていますが、このうち租税特別措置法の15%の軽減税率の適用が受けられなくなります。
② 貸倒引当金の損金算入
法人税法で中小法人等は業種に関わらず繰入限度額に達するまでの金額を損金算入できるとされ、租税特別措置法で法定繰入率の適用が認められていますが、このうち租税特別法の法定繰入率の適用が受けられなくなります。
(2)中小企業者に対する優遇措置
① 少額減価償却資産の取得価額の損金算入
取得価額が30万円未満の減価償却資産につき年300万円を限度とする損金算入の適用が受けられなくなります。
② 試験研究費の特別控除の特例
税額控除割合等の優遇の適用が受けられなくなります。
③ 所得拡大促進税制の特例
税額控除割合等の優遇の適用が受けられなくなります。
④ 中小企業投資促進税制の適用
機械等を取得した場合の特別償却又は特別控除の適用が受けられなくなります。
⑤ 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用
一定の経営改善設備を取得した場合の特別償却または特別控除の適用が受けられなくなります。
⑥ 中小企業経営強化税制の適用
一定の経営力向上設備等を取得した場合の特別償却または特別控除の適用が受けられなくなります。