生命保険の活用
- 法人契約の生命保険の活用方法
- 会社における生命保険の活用方法
(1)事業保障として社長の死亡等により急な借入金の返済等の準備
(2)従業員の福利厚生対策として
(3)役員退職金に備えて一時的な高額支出を抑制、自社株の評価の引き下げ、死亡退職金や弔慰金をカバー
(4)事業承継対策として
(5)自社株の買取資金を準備として自社株が高いとき、多額の相続税を会社が買い取り、後継者はその資金で納税する。
また、法人契約は個人で入るよりも節税効果が大きいですし、経営者に万一のことがあったときには借入金などの返済原資になりますし、退職金にすることも可能です。
節税効果の面からみると、会社契約と個人契約のどちらが有利かは歴然としています。
個人契約の場合は、所得控除として5万円(個人年金を含めても10万円)しか控除されません。
これが会社契約の場合には、120万円の保険料は保険の種類によっては全額必要経費とみなされます。
- 保険の種類
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- 法人契約の生命保険には様々な種類があります。
- 全額が費用計上できる掛け捨て型の定期保険や、1/2が損金となり満期保険金が受け取れる養老保険(原則全員加入が要件)どがあります。
それ例外にも、保険料は高くなりますがその分節税効果が大きく、解約返戻金のある長期定期保険や、損金は1/2になりますが、より多くの解約返戻金のある長期平準定期保険もあります。
ただし、保険期間の長い定期保険を会社契約した場合の経理処理は、損金算入の時期などに一部制約があります。 逓増定期保険は、保険料は一定で保険金額が増加していくのが特徴で資産形成効果が高く、退職金の財源準備等に適しています。
事業の発展とともに重くなる経営者向けの保険といえます。
法人契約の保険料の経理処理
法人で従業員を被保険者とし、生命保険契約をする場合の経理処理をご説明いたします。
○定期保険
契約者 | 被保険者 | 死亡保険金受取人 | 経理処理 |
---|---|---|---|
法人 | 従業員 | 法人 | 損金算入 |
○長期平準定期保険
長期平準定期保険の対象となる定期保険の範囲
契約者=法人、被保険者=役員・従業員、死亡保険金受取人=法人又は被保険者の遺族とする定期保険のうち、保険期間満了時の被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、加入時の年齢に保険期間の2倍に相当する期間を加えた数が105を超えるものをいう。
ただし、特定の役員・従業員を被保険者とし、死亡保険金受取人をその遺族とする場合は給与となる。
《要件》
1.契約年齢+保険期間>70
2.契約年齢+保険期間×2>105
○逓増定期保険
前半6/10の期間で保険料の一部が資産計上となる逓増定期保険の範囲
対象となる逓増定期保険:65/70/75/80歳満了、25/30年満了
次のaとbの関係により、保険期間前年6/10で損金に算入できる保険料の割合が異なります。
a=保険期間満了時の被保険者の年齢
b=契約年齢+保険期間×2
●a>60歳超 かつ a>90 ・・・・ 損金算入割合1/2
●b>70歳超 かつ a>105 ・・・・ 損金算入割合1/3
いずれの要件にも該当しない場合には、全額損金算入できます。
平成19年4月以降大手国内生保会社等取り扱い中止
税法上も損金計上否認される可能性があります。
実質的に全額損金参入が以下のように原則1/2損金不参入に網がかけられるようになりました。
区分 | 6割期間の取り扱い | |
---|---|---|
イ | 満了年齢 45歳超 ただしロ、ハに該当する者を除く |
1/2 損金参入 1/2 資産計上 |
ロ | 満了年齢 70歳超 かつ加入年齢+保険期間×2>95 ただし、ハに該当する者を除く |
1/3 損金参入 2/3 資産計上 |
ハ | 満了年齢 80歳超 かつ加入年齢+保険期間×2>120 |
1/4 損金参入 3/4 資産計上 |
○養老保険
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 損金処理 |
---|---|---|---|
法人 | 従業員 | 法人 | 資産計上 または 1/2資産計上、1/2損金算入 |
- 長所
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ほとんど満期時には解約返戻金があるにもかかわらず1/2が損金計上されるため、その損金部分に対する節税効果がある。課税の繰り延べ。
退職手当等の財源
- 短所
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死亡時には遺族に支払われるため、会社には受取金は入りませんが、福利厚生の一環としてかつ従業員の退職金(分離課税)となるため給与の一部とみなせば、従業員の所得税、住民税の節税になる。
福利厚生施設の充実
○終身保険
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 損金処理 |
---|---|---|---|
法人 | 従業員 | 法人 または 被保険者の遺族 |
資産計上 または 給与 |
○個人年金保険
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 損金処理 |
---|---|---|---|
法人 | 従業員 または 被保険者の遺族 |
法人 または 被保険者 |
資産計上 または 給与 |
○保険料が区分されていない場合
定期付養老保険…保険料が区分されていないと全額資産計上。
これは主契約の保険料つまり養老保険の保険料として取り扱われるからです。
その結果、定期特約保険料相当額について損金算入できる可能性があるにかかわらず資産計上を余儀なくされます。
もっとも養老保険の場合、保険期間終了のときに満期保険金が支払われ、その際に資産計上額は全額取り崩すことにはなります。保険期間が長期に亘る場合には損金算入の機会が相当後になります。
経営者、役員等の退職金
役員退職金は、報酬月額や役員在任年数などによって異なります。
法人税法では、役員退職慰労金について相当と認められる額を超える場合は、その超過部分の損金参入はできないことになっていますが、社会的通念上、妥当な金額であると判断された場合は、社内規定が尊重されます。
(一般的な役員退職金の算出方法)
役員退職金 = 役員の最終月額報酬 × 役員在任年数 × 功績倍率 + 特別功労金
※ 「功績倍率」は、事業規模が類似する同業他社の平均的な支給倍率(功績倍率は通常1.0~3.0の範囲、特別功労金は30%の範囲内で設定)を参考に、『役員退職慰労金規定』 として定めておきます。
※ 業績不振などにより低額・無報酬であった役員の退職金は、引下げ前の支給額などをもとに本来支給すべき適正な月額報酬に置き換えて算定します。
従業員には中退共が有利
従業員の退職金は、中小企業しか加入できない「中小企業退職金共済」(中退共)に加入するのが1つの方法です。
これは、独立行政法人「勤労者退職金共済機構」が運営する共済制度で、会社は役員を除く全従業員を加入させ、毎月掛け金を納付します。
従業員が退職する際には事業団から従業員に、直接退職金が支払われます。
毎月支払う掛け金は全額、支払い保険料や福利厚生費などの経費として処理することができますので、節税をしながら計画的に退職金の積立てができます。
死亡退職金と弔慰金を区分して計算する
死亡退職金と弔慰金を区分することにより、弔慰金部分が損金算入になり、かつ相続税の非課税(月額報酬の6ヶ月(非業務上)又は36ヶ月(非業務上)になる。
上記はいずれも過大退職金は、税務上否認されます。