仮想通貨(ビットコイン)にかかる各税法についての考察
平成29年度の税制改正法案の成立により仮想通貨の取扱いにも変化がありました。具体的には平成29年7月1日より仮想通貨の譲渡は消費税では非課税となりました。
そこで、ビットコインをはじめとする仮想通貨について、平成29年度の改正消費税法を中心に解説していきます。
1 仮想通貨とは
「仮想通貨」とはネット上で使用されるお金のことをいい、資金決済に関する法律によりその定義がされています。
仮想通貨は、現実の紙幣や硬貨と異なり、「取引所」と呼ばれる専門業者を通じて売買します。利用者は、ネット上で作成した専用の電子財布(ウォレット)によって仮想通貨を保有します。
仮想通貨は、パソコンやスマートフォンを通じて自由に送金ができ、手数料も銀行間送金と比べて僅少で済みます。
一方、投機を目的として保有する人も多くいます。ビットコインは今年3月に1取引単位あたり1,000ドルを割り込んだ価格が6月には3,000ドル近くまで急上昇しています。今後も技術的な問題に端を発した8月1日の分裂騒動以降の動きにより、価格が大きく変動することが予想されます。
2 消費税法改正の理由
消費税法上、支払手段の譲渡は非課税とされています。支払手段とは、紙幣や硬貨、小切手などを指し、具体的には円から外貨への両替や手形の割引(金融機関への手形の譲渡)などが支払手段の譲渡に該当します。ただし、支払手段であっても記念硬貨のように収集品及び販売用のものは非課税とはなりません。
これまで仮想通貨は、消費税法に規定する支払手段には該当しないとして、消費税が課税されていました。しかし欧州司法裁判所が2015年10月に、ビットコインをはじめとする仮想通貨の譲渡は付加価値税(VAT)が非課税とする判決を下しました。また本邦の資金決済に関する法律の改正により仮想通貨の定義が新設されたことを受けて、消費税法でも仮想通貨の譲渡を非課税にしたものと思われます。
3 課税売上割合の計算
消費税法上非課税と定義されたもののうち、支払手段の譲渡については、課税売上割合の計算には一切関係させません。
仮想通貨の譲渡は支払手段の譲渡に該当することになりましたので、その譲渡対価は課税売上割合の分母と分子のいずれにも計上しないことになります。
4 他の税目における仮想通貨の取扱い
仮想通貨に関する税務上の取扱いについては、平成29年度税制改正では消費税の取扱いが明記されているだけです。所得税、法人税、相続税については未だ明確な取扱いがありません。以下私見ながら、簡単にコメントしてみたいと思います。
所得税・・・所得税法上、10種類に分類される所得のうち、仮想通貨を「商品」と認識した場合、売買で生じた利益は事業所得または雑所得に該当するものと思われます。
また、購入時と使用時の価格の差額は譲渡所得または雑所得に該当するものと思われます。
法人税・・・外貨や投資有価証券のように、購入時と決済(期末)時の価格の差額は差損益の計上が必要になると思われます。
相続税・・・仮想通貨が無体財産権のように相続または遺贈により取得できるのであれば、相続発生時の価格で相続税の課税がされると思われます。
【追記】
国税庁は仮想通貨の取引で生じる利益は所得税法上、総合課税の雑所得にあたるとの見解をまとめました(日本経済新聞 平成29年9月12日朝刊、同10月26日朝刊)。
これは値上がりした仮想通貨を売却して利益が出た場合、または値上がりした仮想通貨を使って、その時の時価に相当する物を買った場合も同じです。
上場株式の譲渡と違って、仮想通貨が赤字になった場合の損失を、3年間繰り越して、利益の出た年度から差引いて、税額を減らせる繰越控除も適用されない。
公社債や上場株式などの金融所得は譲渡損益の合算によって課税所得を減らすことができる損益通算があり、生じた損失は最大3年間繰り越してその期間の利益との相殺ができます。
サラリーマンなど給与所得者は、給与以外の所得が20万以上ある場合は、合算して確定申告をしなくてはいけないので、今年度特に変動で売買している方が多いと思われるので
要注意です。実務上、売買を多数繰り返している場合、把握することが難しいため、年間取引書等、ビットフライヤーのように対応を表明しているところで、売買するのがよさそうです。複数の取引所を使用すると、利用者単位での所得は同じく、把握するのは実務上難しく感じます。
また雑所得のうちFX取引や金先物取引の利益には申告分離課税の20.315%の税率が適用されます。
一方今回の見解では、仮想通貨の売却や使用にかかる利益は事業所得や給与所得などの他の所得と合算し、その合算した所得に応じた5~45%の累進税率が課されることになりました。
税務上の扱いは明確になりましたが、近年の急激な値上がりにより含み益を抱えている方にとっては、今後多額の税金が発生する可能性があり悩ましいところです。