1 不動産業における消費税の課税、非課税の取扱い
消費税法上、事業者が事業として行った土地の譲渡や貸付け、居住の用に供される住宅の貸付けは消費税を課税しない非課税取引となっています。一方住宅の譲渡については課税取引として消費税が課されます。不動産業者については土地の譲渡や貸付け、住宅の貸付けの収入は非課税取引であるので、これらの対価の額は納税義務の判定の基礎である基準期間における課税売上高には含まれません。
土地付き建物を譲渡した場合には、土地部分の対価は非課税、建物部分の対価は課税となります。ところが土地付き建物を賃貸した場合には、賃貸借契約で土地部分の賃貸料と建物部分の賃貸料を区分している場合であっても、賃貸料の全額が建物の賃貸料となり課税の対象となります。
また個人事業者である不動産業者が自宅を売却した時は、その売却は事業として行ったものではないため、そもそも消費税の課税の対象とはなりません。
2 高額特定資産を取得した場合
不動産業者のように事業の用に供する資産ひとつひとつが高額である場合、高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例について注意が必要です。
高額特定資産とは一取引単位につき課税仕入れに係る支払対価の額(税抜)が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産をいいます。
消費税の原則課税の適用を受けている課税期間中に高額特定資産の取得をした場合には、その取得した日の属する課税期間の翌課税期間からその取得した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間(通常、取得をした課税期間を含めて3年間)は原則課税が強制適用されることになります。この期間中は原則課税から簡易課税への変更はできず、また基準期間における課税売上高が1,000万円以下の期間があっても免税事業者にはなりません。
なおこの原則課税強制適用期間に基準期間における課税売上高が1,000万円以下となった場合には、すでに「課税事業者選択届出書」を提出している場合を除き、「高額特定資産の取得に係る課税事業者である旨の届出書」を速やかに提出しなければなりません。