1 法人税
➀中小企業経営強化税制の創設と中小企業投資促進税制の延長
中小企業者の投資促進、サービス産業も含めた生産性向上につながる設備投資を支援するため、新たに中小企業経営強化税制が創設されました。
中小企業者等が制度に該当する設備を取得し、指定事業の用に供した場合に即時償却または税額控除のいずれかの適用が受けられます。
また中小企業者等が対象設備を取得した場合に適用できる中小企業投資促進税制は適用期間が2年間延長されました。
➁中小企業者等に係る法人税の軽減税率の特例の延長
現行の年800万円以下の所得金額に対する税率を19%から15%に軽減する特例が、平成31年3月31日までに開始する事業年度に適用期限が延長されました。
➂中小企業向け租税特別措置の停止
財政基盤の弱い中小企業を支援するという目的から、前3事業年度の平均所得金額が15億円を超える事業年度については、租税特別措置法の中小企業向け優遇措置の適用が停止されます。
➃研究開発税制の見直し
研究開発税制の対象となる試験研究費について、これまでの製造業の研究開発のほかにビッグデータ等を活用した第4次産業革命型のサービス開発に対する試験研究費が追加されます。
総額型の税額控除は一定割合から試験研究費の増減に応じた仕組みとなります。また増加型の税額控除の上乗せ措置が廃止されました。
➄所得拡大促進税制の見直し
所得拡大促進税制の税額控除が拡充され、前年度比2%以上の賃上げをした企業については、現行の10%税額控除に加え大法人は2%、中小法人は12%の上乗せができるようになりました。
➅定期同額給与の拡充
定期同額給与については、今まではその事業年度の各支給額が同額であるものが対象でしたが、今回税や社会保険料等の控除後の金額が同額である場合も定期同額給与の範囲に加わりました。
➆地域未来投資促進税制の創設
各地域の特性を生かし、地域経済を牽引する事業について必要な設備投資として資産を取得して該当事業の用に供したときは特別償却または税額控除のいずれかが選択適用できます。
➇地方拠点強化税制の拡充
東京から地方への人の流れを促す地方拠点強化税制には、地方に本社機能を拡充する拡充型と東京23区から地方に本社機能を移転する移転型があります。
この制度のうち雇用促進税制の特例については税額控除限度額が拡充されました。
2 所得税
➀配偶者控除・配偶者特別控除の見直し
配偶者特別控除については、所得控除額38万円の対象となる配偶者の給与収入の上限が150万円に引き上げられました。
また配偶者控除等の適用される納税者本人に収入制限が設けられ、給与収入1,120万円(合計所得金額900万円)を超える場合には控除額が逓減・消失するようになりました。
➁医療費控除・セルフメディケーション税制の添付書類の見直し
この所得控除の適用について確定申告書提出の際に必要な「医療費の領収または医薬品購入費の領収書の添付または提示」が「医療費の明細書または医薬品購入費の明細書の添付」に見直されました。
➂積立NISAの創設
積立NISAとは、家計の安定的な資産形成を支援する観点から、少額からの積立・分散投資を促進するための制度として創設されました。現行のNISAと同様に口座内で生じた配当及び譲渡益については非課税となっています。
3 相続税・贈与税
➀非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し
この制度は中小企業の後継者が先代経営者から相続・贈与等により取得した非上場株式に係る相続税・贈与税の一部の納税を猶予する制度です。猶予を受けた中小企業者は、5年間平均8割以上の雇用の維持などの事業継続要件を満たしていれば、その後一定要件を満たしている場合に限り猶予税額が免除されます。
今回納税猶予を受けるための事業継続要件について、諸条件の緩和がありました。
➁相続税等の財産評価の適正化
取引相場のない株式の評価方法について、中小企業等の実力を適切に反映した評価となるように、類似業種比準方式や評価会社の規模区分について見直しがありました。
➂相続税の物納財産の順位と範囲の見直し
相続税の物納財産に充てることができる財産の順位と範囲が見直され、「株式、社債及び証券投資信託等の受益証券のうち、金融商品取引所に上場されているもの等」や「投資証券等のうち金融商品取引所に上場されているもの等」が物納財産の第1順位とされました。
➃広大地の評価の見直し
1,000㎡(三大都市圏は500㎡)以上の広大地の評価については、広大地補正率を利用した面積に比例して減額する方法から、各土地の特性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直されます。
➄国外財産に対する相続税・贈与税の納税義務の範囲の見直し
今までは日本で就労する外国人が日本国内で死亡した場合、その者の国外財産についても日本の相続税の課税対象になることがあるため、一定の場合にはその国外財産を課税対象にしないこととし、高度外国人材の受け入れ促進を目指します。
一方租税回避防止のため、相続人等または被相続人等が10年以内に国内に住所を有する日本人の場合には、国内外の財産ともに課税の対象とします。