公益法人制度改革
公益法人の設立は、従来主務官庁の許可が必要でした。
しかし平成20年12月1日に施行された新しい公益法人制度により、一般社団・財団法人に関しては、登記手続のみで設立が可能になりました。
ただし、公益社団・財団法人となるためには、更に公益認定等委員会などの認定を受ける必要があります。
認定が却下された場合でも、必要な事業や組織を改善すれば、再度、公益社団・財団法人への移行の申請をすることが可能です。
なお、総務省の「公益法人白書平成20年度版」にある特例民法法人の数は約25,000件ですが、平成22年5月時点での公益法人への移行認定申請は約520件、そのうち認定が通った件数は約280件となっています。
一般社団・財団法人は行政庁の監督や許可はありませんが、公益社団・財団法人は行政庁の許可を受けます。事務所や事業所が複数県にまたがる場合は内閣府、そうでない場合は都道府県になります。
平成27年7月内閣府発表の「公益法人に関する概況」によると平成26年12月1日現在の公益法人の数は9,300法人で、そのうち内閣府を行政庁とするものが2,334法人、都道府県を行政庁とするものが6,966法人となっています。また9,300法人のうち公益社団法人が4,089法人、公益財団法人が5,211法人となっています。
法人の種類
- 公益社団法人及び公益財団法人
- 特例民法法人(平成25年11月30日までの暫定的な法人でした)
- 収益事業課税が適用される一般社団法人及び一般財団法人(非営利型法人)
- 全所得課税が適用される一般社団法人及び一般財団法人
法人税法上は公益法人等((4)は普通法人)として認識されます。
法人税の節税メリットは以下の順です
- 公益社団法人及び公益財団法人
特例民法法人- 収益事業課税が適用される一般社団法人及び一般財団法人(非営利型法人)
- 全所得課税が適用される一般社団法人及び一般財団法人
- 一般法人(参考)
任意団体(人格のない社団)とNPO法人は収益事業課税が適用される一般社団・財団法人とほぼ同じとなります。
法人の設立のしやすさは以下の順です
- 一般法人
- 全所得課税が適用される一般社団法人及び一般財団法人
- 収益事業課税が適用される一般社団法人及び一般財団法人(非営利型法人)
- 公益財団法人及び公益社団法人
NPO法人は2に該当します。(NPOは設立に最低10人が必要かつ認証手続きが必要)
一般社団法人及び一般財団法人の設立及び確認
- 定款の作成及び公証人の認証
- 一般財団法人の場合は設立者の財産(各設立者それぞれ300万円以上)の拠出の履行
- 定款の定めによる,設立時社員(一般財団法人の場合は評議員),設立時理事,設立時監事(設立時会計監査人を置く場合は,この者も)の選任
- 設立時理事及び設立時監事による,設立手続の調査
- 法人を代表すべき者(設立時代表理事)の法定期限内での主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局に対する設立の登記の申請
- 定款記載事項
- 目的 (共益活動型非営利法人を除き、制限なし)
- 名称 (一般社団法人または一般財団法人をつけることが必要)
- 主たる事務所の所在地 (最小行政区画まで)
- 設立者の氏名又は名称及び住所 (印鑑証明書の記載通り)
- 設立に際して各設立者が拠出をする財産及びその価額 (各300万以上・一般財団法人のみ)
- 設立時評議員,設立時理事及び設立時監事の選任に関する事項(一般財団法人のみ)
- 設立時会計監査人の選任に関する事項(一般財団法人のみ)
- 評議員の選任及び解任の方法(一般財団法人のみ)
- 社員の資格の得喪に関する規定(一般社団法人のみ)
- 公告方法
- 事業年度
非営利型法人とは
非営利型一般社団・財団法人となるためには、以下の要件のうち、いずれかを満たす必要があります。
- 非分配型
その行う事業により利益を得ること又はその得た利益を分配することを目的としない法人であってその事業を運営するための組織が適正であるものとして下記要件すべてに該当するもの
- その定款に剰余金の分配を行わない旨の定めがあること
- その定款に解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は次に掲げる法人に帰属する旨の定めがあること
- 公益社団法人又は公益財団法人
- 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第五条第十七号イからトまで(公益認定の基準)に掲げる法人
- 1および2の定款の定めに反する行為(1、2および4に掲げる要件のすべてに該当していた期間において、剰余金の分配又は残余財産の分配若しくは引渡し以外の方法(合併による資産の移転を含む。)により特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと
- 各理事(清算人を含む。以下同じ。)について、当該理事および当該理事の配偶者または3親等以内の親族その他の当該理事と特殊の関係(注2)のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、1/3以下であること
- 共益活動型
その会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人であってその事業を運営するための組織が適正であるものとして下記要件すべてに該当するもの
- その会員の相互の支援、交流、連絡その他の当該会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること
- その定款(定款に基づく約款その他これに準ずるものを含む。)に、その会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又は当該金銭の額を社員総会若しくは評議員会の決議により定める旨の定めがあること
- その主たる事業として収益事業を行っていないこと
- その定款に特定の個人または団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと
- その定款に解散したときはその残余財産が特定の個人または団体(国若しくは地方公共団体、上記イもしくはロに掲げる法人またはその目的と類似の目的を有する他の一般社団法人若しくは一般財団法人を除く。)に帰属する旨の定めがないこと
- 1~5および7に掲げる要件のすべてに該当していた期間において、特定の個人または団体に剰余金の分配その他の方法(合併による資産の移転を含む。)により特別の利益を与えることを決定し、または与えたことがないこと
- 各理事について、当該理事および当該理事の配偶者または3親等以内の親族その他の当該理事と特殊の関係(注2)のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、1/3以下であること
(注1)清算中に上記の要件に該当することになったものを除きます。
(注2)理事と特殊の関係にある者は、次のとおりです(cf. 改正後の法人税法施行規則 第2条の2)。
- 当該理事の配偶者
- 当該理事の3親等以内の親族
- 当該理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
- 当該理事の使用人
- 1~4以外の者で当該理事から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
- 3~5の者と生計を一にするこれらの者の配偶者または3親等以内の親族
特例民法法人の新制度移行について
従来の公益法人は、平成20年12月1日の公益法人改正の法律施行と同時に、特例民法法人となりました。
これは移行における暫定的な取り扱いであり、法律施行後の5年以内、つまり平成25年11月30日までに新制度への移行の申請をする必要があります。移行しない法人は、解散したものとみなされてしまいます。移行手続きとして、行政庁に移行の認可申請及び認定申請をします。
- 申請基準について
一般社団・財団法人へ移行しようとする法人
- 定款変更案の内容が一般財団・財団法人法及びその政省令に適合するものであること。
- 公益目的支出計画が適正であり、かつ、計画を確実に実施できると認められるものであること。
公益社団・財団法人に移行しようとする法人
- 定款変更案の内容が一般財団・財団法人法及び公益認定法並びにこれらの政省令に適合するものであること。
- 公益認定法における公益認定の基準に適合するものであること。
※申請が認可又は認定されなかったとしても移行期間内であれば何度でも再申請できます。
- 必要な申請書類
- 認可申請のための申請書類
申請書、定款及び定款変更、公益目的財産額及びその計算を記載した書類、財産目録・貸借対照表その他の財務書類、公益目的支出計画を記載した書類、その他政省令で定められた書類 - 認定申請のための書類
申請書、定款及び定款変更案、事業計画書・収支計算書・財産目録・貸借対照表その他の財務書類、役員の報酬支給の基準、その他政省令で定める書類
一般社団・財団法人においては、会計に関する書類として更に貸借対照表・損益計算書・事業報告及びこれらの付属明細書を作成しなければなりません。
- 認定のための公益性の基準
公益財団法人としてふさわしいかどうかの判断は、各都道府県に設けられた「公益認定等委員会及び合議制の機関」が行います。その際に認定の拠りどころとなる基準が、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」第5条にある以下の「公益認定基準18項目」です。
- 公益目的事業(23事業)を行うことを主たる目的とするものであること。
※公益目的事業(23事業)とは、公益認定法第2条別表において限定列挙される事業であって不特定多数の者の利益の増進に寄与するもので、23項目事業の比率が50%未満だと公益認定を受けられない。 - 公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること。
- その事業を行うに当たり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。
- その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。ただし、公益法人に対し、当該公益法人が行う公益目的事業のために寄附その他の特別の利益を与える行為を行う場合は、この限りでない。
- 投機的な取引、高利の融資その他の事業であって、公益法人の社会的信用を維持する上でふさわしくないものとして政令で定めるもの又は公の秩序若しくは善良の風俗を害するおそれのある事業を行わないものであること。
- その行う公益目的事業について、当該公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること。
- 公益目的事業以外の事業(以下「収益事業等」という。)を行う場合には、収益事業等を行うことによって公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
- その事業活動を行うに当たり、第十五条に規定する公益目的事業比率が百分の五十以上となると見込まれるものであること。
- その事業活動を行うに当たり、第十六条第二項に規定する遊休財産額が同条第一項の制限を超えないと見込まれるものであること。
- 各理事について、当該理事及びその配偶者又は三親等内の親族(これらの者に準ずるものとして当該理事と政令で定める特別の関係がある者を含む。)である理事の合計数が理事の総数の三分の一を超えないものであること。監事についても、同様とする。
- 他の同一の団体(公益法人又はこれに準ずるものとして政令で定めるものを除く。)の理事又は使用人である者その他これに準ずる相互に密接な関係にあるものとして政令で定める者である理事の合計数が理事の総数の三分の一を超えないものであること。監事についても、同様とする。
- 会計監査人を置いているものであること。ただし、毎事業年度における当該法人の収益の額、費用及び損失の額その他の政令で定める勘定の額がいずれも政令で定める基準に達しない場合は、この限りでない。
- その理事、監事及び評議員に対する報酬等(報酬、賞与その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益及び退職手当をいう。以下同じ。)について、内閣府令で定めるところにより、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めているものであること。
- 一般社団法人にあっては、次のいずれにも該当するものであること。
- イ.社員の資格の得喪に関して、当該法人の目的に照らし、不当に差別的な取扱いをする条件その他の不当な条件を付していないものであること。
- ロ.社員総会において行使できる議決権の数、議決権を行使することができる事項、議決権の行使の条件その他の社員の議決権に関する定款の定めがある場合には、その定めが次のいずれにも該当するものであること。
- (1)社員の議決権に関して、当該法人の目的に照らし、不当に差別的な取扱いをしないものであること。
- (2)社員の議決権に関して、社員が当該法人に対して提供した金銭その他の財産の価額に応じて異なる取扱いを行わないものであること。
- ハ.理事会を置いているものであること。
- 他の団体の意思決定に関与することができる株式その他の内閣府令で定める財産を保有していないものであること。ただし、当該財産の保有によって他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれがない場合として政令で定める場合は、この限りでない。
- 公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産があるときは、その旨並びにその維持及び処分の制限について、必要な事項を定款で定めているものであること。
- 公益認定の取消しの処分を受けた場合又は合併により法人が消滅する場合において、公益目的取得財産残額があるときは、これに相当する額の財産を当該公益認定の取消しの日又は当該合併の日から一箇月以内に類似の事業を目的とする他の公益法人若しくは次に掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に贈与する旨を定款で定めているものであること。
- 清算をする場合において残余財産を類似の事業を目的とする他の公益法人若しくは前号イからトまでに掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に帰属させる旨を定款で定めているものであること。
- 公益目的財産額及び公益目的支出計画
特例民法法人が、一般法人への移行認可申請を行政庁に行うときの添付書類の一つに公益目的支出計画があります。
これは、一般法人への移行認可申請書を提出する時点の直近の事業年度決算日の貸借対照表の純資産額を基礎として資産の評価損益を加減算して算定するもので、この算定された財産額を「公益目的財産額」といいます。
一般社団・財団法人に移行した後、公益目的財産額相当額を公益目的に支出することになりますが、これは、公益法人として保有していた財産額は公益目的のために支出しなければならないという考えに基づいています。
公益目的支出計画に公益目的として記載できる事業は以下の3つです。
- 継続事業
- 公益目的事業
- 公益のための寄附
公益目的支出の計画の実施は法律上の期限は特に定められていませんが、法人が自主的に期限を定め、一般社団・財団法人に移行後実施することになります。
会計と税務
- 会計
提出書類
財務諸表
- 貸借対照表(当年度と前年度の金額を表示する)
- 貸借対照表内訳表(事業ごとに区分し、内部取引は内訳表で相殺消去する)
- 正味財産増減計算書(当年度と前年度の金額を表示する)
- 正味財産増減計算書内訳表(公益目的事業、収益事業、法人会計、内部取引消去に区分し、更にその中でA事業、B事業と区分する)
- 事業報告書
その他作成すべき書類
- 附属明細書
- 財産目録(公益法人、特例民法法人のみ)
- キャッシュフロー計算書(公益社団、財団で会計監査人設置に限定)
- 財務諸表に関する注記
- 内部管理事項(会計帳簿、収支予算書、収支計算書、書類の保存)
会計処理の例
例えば土地を寄付された場合、会計処理上では土地(貸借対照表)(B/S)/土地受贈益(正味財産増減計算書)(B/S) XX円となります。
参考 社会福祉法人
1. 現金(B/S)/寄付金収入(事業活動収支計算書) XX円
2. 基本金組入額(第1~4号)(事業活動収支計算書)/基本金(B/S)XX円
上記1の仕訳を見て
支払資金/寄付金収入(資金収支計算書)XX円
また、受入れる際、受託責任を明確にするために、使途目的が制限させている場合は、指定正味財産として表示させ
ることとなりました。(20年改正基準)
以前はストック式で
建物取得支出(収支計算書)/現金(B/S) XX円
建物(B/S)/建物増加額(正味財産増減計算書) XX円
と処理していましたが、フロー式では
建物/現金
として処理することで、
A 資金収支計算+正味財産計算書の正味財産増減残高=B/Sの正味財産増減
から
B 正味財産増減計算書=B/Sの正味財産増減残高となりました。
そのほか、会計処理の注意事項として
B/S上の借方上の仕訳として、基本財産、特定財産、その他の区分
貸方上の仕訳として、指定正味財産と一般正味財産の区分
正味財産増減計算書上の指定正味財産増減の部残高と一般正味財産増減の部残高、その他の残高
に注意することと、異動があった場合の切返仕訳
一般正味財産への振替額(指定正味財産増減の部)/受取補助金振替額(一般正味財産増減の部)
等の振替の煩雑さがあるので注意が必要です。
- 貸借対照表の固定資産は、基本財産、特定資産、その他固定資産の3つに区分されています。
基本財産とは、定款において基本財産と定められた資産をいい、維持義務と処分制限がかかります。
特定資産とは、使用、保有又は運用について、一定の制約が付されている資産をいいます。 - 正味財産増減計算書には、指定正味財産と一般正味財産の2種類あり、そのどちらを増減させるかは、寄付者の意思によるものとなります。
寄付者の意思によって、特定の目的に使途が制限されていれば指定正味財産となり、指定正味財産以外の正味財産部分は一般正味財産となります。
(注)上記の説明のとおり、借方と貸方(表裏一体の関係)及び切返仕訳に留意しなくてはなりません。
- 税務(所得税、法人税、相続税、および地方税)
税率 | みなし寄付金 | 利子等に係る源泉所得税 | 法人住民税 | 法人事業税 | 固定資産税等 | |
---|---|---|---|---|---|---|
公益法人 (収益事業課税) |
23.4% (年800万までは15%) |
あり 公益目的事業のため必要な金額 (損金算入割合最低50%) |
非課税 | 均等割7万 法人税割12.9% |
~400万:3.4% 400~800万:5.1% 800万~:6.7% 特別地方事業税:43.2% |
非課税措置 |
(収益事業課税) |
(損金算入割合一律20%) |
法人税割17.3% 利子割5% |
400~800万:4% 800万~:5.3% 特別地方事業税:81% |
(平成25年度まで) |
||
一般財団、社団 (非営利型法人、 収益事業課税) |
23.4% (年800万までは15%) |
なし | 課税 | 均等割7万 法人税割12.9% |
~400万:3.4% 400~800万:5.1% 800万~:6.7% 特別地方事業税:43.2% |
原則課税(注1) |
一般財団、社団 (非営利型法人以外、 普通法人課税) |
23.4% (年800万までは15%) |
なし | 課税 | 均等割7万 法人税割12.9% |
~400万:3.4% 400~800万:5.1% 800万~:6.7% 特別地方事業税:43.2% |
課税 |
ただし、均等割免除は公益、特例民法では可、一般財団は非営利でも不可となっています。
収益事業課税とは、34業種の収益事業より生じた所得のみを課税対象とすることを指します。
(公益法人認定法上公益目的事業と認定された場合は、特掲34事業に該当しても、法人税法上課税されません。ただし、非営利型一般社団、財団は、たとえ公益目的事業として定款に記載されている事業でも、法人税法が規定している34業種に該当すれば課税されます。)
旧民法34条では、逆に公益事業であっても法人税法上収益事業に該当する場合は、課税対象とされていました。
普通法人課税とは、すべての所得に課税をする、全所得課税のことを指します。
(注1)一般社団法人・一般財団法人のうち非営利型法人の場合
次の施設については、非課税措置が適用されます。医療関係者の養成所において直接教育の用に供する固定資産
平成20年12月1日より前から設置している幼稚園において直接保育の用に供する固定資産
平成20年12月1日より前から設置している図書館、博物館において直接その用に供する固定資産
公益法人等が行う収益事業の中でも、公益に寄与しているという配慮からいくつかの要件を満たした場合、収益事業から除外される事業もあります。
その事業における従事員総数の半数以上が、次に掲げる者である場合収益事業には該当しないこととされます。 非営利型その他一般社団、財団法人は
- 公益社団法人又は公益財団法人が行う公益目的事業(法人税法施行令5条2項1号)平成20年12月1日終了事業年度以降公益会計改正追加
- 身体障害者、知的障害者、精神障害者
- 生活保護を受けている者
- 65歳以上の者
- 児童(20歳未満)を扶養する配偶者のない女子、寡婦
補助金収入の取扱
- 固定資産の取得又は改良に充てるために交付を受ける補助金等の額は、たとえ当該固定資産が収益事業の用に供されるものである場合であっても、収益事業に係る益金の額に算入されません。
- 収益事業に係る収入又は経費を補てんするために交付を受ける補助金等の額は、収益事業に係る益金の額に算入されます。
(注) ①に掲げる補助金等をもって収益事業の用に供する固定資産の取得又は改良をした場合であっても、当該固定資産に係る償却限度額又は譲渡損益等の計算の基礎となる取得価額は、実際の取得価額によります(法人税基本通達15-2-12)
法人 | 個人 | ||||
---|---|---|---|---|---|
寄付金支出 | 寄付金支出 | 含み益のある現物の譲渡所得 | 相続財産の寄付による相続税 | ||
公益財団 (特定公益増進法人) |
(寄付金支出前所得金額×6.25%+ 資本金等の額×0.375%)×50% |
その年の総所得金額等の 40%相当額-2千円 |
寄付された財産の取得費に 相当する金額が非課税 (措置法40条)(*1) (認定が取り消された場合は、 寄付者個人ではなく寄付を受けた法人で 贈与税等の課税 (法人税等は控除)) |
非課税(措置法70条)(*2) | |
非営利型 一般財団 |
非分配型 | (寄付金支出前所得金額×2.5%+ 資本金等の額×0.25%)×25% |
控除なし | 寄付された財産の取得費に 相当する金額が非課税 (措置法40条)(*1) (認定が取り消された場合は、 寄付者個人ではなく寄付を受けた法人で 贈与税等の課税 (法人税等は控除)) |
相続税課税 |
共益活動型 | (寄付金支出前所得金額×2.5%+ 資本金等の額×0.25%)×25% |
控除なし | 譲渡所得課税 | 相続税課税 | |
一般財団 | (寄付金支出前所得金額×2.5%+ 資本金等の額×0.25%)×25% |
控除なし | 譲渡所得課税 | 相続税課税 | |
>(寄付金支出前所得金額×6.25%+ 資本金等の額×0.375%)×50% |
相当する金額が非課税 (措置法40条)(*1) (認定が取り消された場合は、 寄付者個人ではなく寄付を受けた法人で 贈与税等の課税 (法人税等は控除)) |
(*1)
措置法40条の適用対象
- 公益社団法人・公益財団法人
- 特定一般法人(非営利法人のうち、非分配型の要件を満たすもの)
- その他の公益を目的とする事業を行う法人
措置法40条の適用要件
公益法人等に対する寄附財産にかかる譲渡所得について非課税の承認を受けられる要件は次の通りです。
- その寄附が、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること
- 寄附された財産が、寄附された日以後2年以内に、受贈者である公益法人の公益を目的とする事業の用に直接供され、または供される見込みであること
- 寄附することにより、その寄附者の所得税の負担を不当に減少させ、またはその寄附者の親族その他これらの者と特別な関係にある者の相続税もしくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないこと。
不当減少要件
- 運営が適正であること(役員等のうち、親族の関係や、これらと特殊な関係がある者の占める割合が1/3以下とする旨の定めが定款にあること)
- 関係者に特別の利益を与えないこと
- 残余財産が国等に帰属する旨の定めがあること
- その法人につき公益に反する事実が無いこと
(*2)
措置法70条の適用対象
- 国
- 地方公共団体
- 公益社団法人もしくは公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人で次に掲げる要件を満たすもの
- 教育もしくは科学の振興
- 文化の向上
- 社会福祉への貢献
- その他公益の増進に著しく寄与する一定の法人
各種税について
(法人住民税)
上記比較表による。(一般法人と公益法人は資本金等がないので均等割は最低税率が適用されます。)法人税割については公益法人と非営利型法人については収益事業課税、それ以外は全所得課税となります。
(法人事業税)
公益法人と非営利型法人については収益事業課税、それ以外は全所得課税となります。
(消費税)
事業者が、事業として資産の譲渡、貸付、並びに役務の提供がある限り、消費税の課税義務者となります。ただし、特定収入の取扱→仕入税額控除の調整計算によって納付額の増加する可能性に注意が必要です。
(不動産取得税)
収益事業以外公益社団法人又は公益財団法人が使用するために取得した場合は、減免措置により非課税となります。
(固定資産税)
収益事業以外公益社団法人又は公益財団法人が使用するために取得した場合は、減免措置により非課税となります。
(印紙税)
印紙税の非課税法人には該当しないため2号等は課税。但し、17号(領収書等)は非課税となります。
(源泉所得税)
一般の法人と同様、源泉徴収義務者となります。
(事業所税)
指定都市等が事業所面積及び従業員給与総額を課税標準として課税される市町村民税ですが、公益法人では、収益事業以外の事業の部分については非課税となります。
各種届出書(税務署)
- 法人設立届出書(設立の日以後2ヶ月以内)
- 給与等設置届出書(設立の日以後1ヶ月以内)
- 収益事業開始届出書(収益事業を開始した日以後2ヶ月以内)
- 異動届出書(公益認定法の公益認定を受けたとき、非営利型法人に該当するとき)(速やかに)
- 普通法人又は協同組合等になった旨の届出書(公益法人等が普通法人に該当することとなったとき)(速やかに)
- 収益事業廃止届出書(収益事業を廃止した後、速やかに)
毎年の税務署への届出
公益法人等(収益事業を行っていることにより法人税の確定申告書を提出する法人を除きます。)は、年間の収入金額が8000万円以下(資産の売却による収入で臨時的なものを除きます。)の場合を除き、原則として事業年度終了の日の翌日から4月以内に、その事業年度の損益計算書等を所轄税務署長に提出しなければなりません。
その他参考Q&A
1.法人に圧縮記帳は可能か
圧縮記帳方式は何点かありますが、いずれにしても課税の繰延方式なので、収益、非収益に関わらず、固定資産の取得改良のための補助金は非課税のため、圧縮記帳の前提条件は成立しません。
2.基本財産、特定資産、指定正味財産、一般正味財産の関係
基本財産(資産の部)
基本財産とは、法人の定款により定められた財産をいいます。
定款に定められることにより、維持義務及び処分制限がかかり、また、その滅失により法人の目的事業が不能になると法人の解散自由になります。
特定資産(資産の部)
特定資産とは、基本財産以外の固定資産のうち、使用、保有又は運用について、一定の制限が付されているものをいいます。(例 工賃変動積立金、減価償却相当特定預金)
指定正味財産(正味財産の部)
指定正味財産とは、寄付者、会員等によりその使途が制約が課されているものの受入額をいいます。(例 国庫補助金、受入寄付金、助成金等)
一般正味財産(正味財産の部)
一般正味財産とは、正味財産から指定財産を控除したもので、法人の自由意志で使用可能です。(例 受入寄付金「使途不特定」)
補助金1,000円を指定正味財産1,000円に充てた場合(耐用年数10年とする)
現金/受入補助金 1,000円
(cf. 支払資金/受入補助金収入1,000円)
建物/現金 1,000円
(cf. 建物取得支出/支払資金 1,000円)
国庫積立金積立額/国庫補助金 1,000円←社会福祉法人会計の仕訳
事業活動収支計算書も貸方、借方の損益バランスを図る
減価償却費/建物 100円
国庫補助金/国庫補助金取崩額 100円←社会福祉法人会計の仕訳
事業活動収支計算書も減価償却相当分を国庫補助金の取崩で借方、貸方の損益バランスを図る
公益法人会計
P/L 受入補助金1,000円-減価償却費100円=900円
C/F 受入補助金収入1,000円-建物取得支出1,000円=0円
社会福祉法人会計
P/L (受入補助金1,000円+国庫補助金取崩額100円)-(国庫積立金積立額1,000円+減価償却費100円)=0円
C/F 受入補助金収入1,000円-建物取得支出1,000円=0円
となり、公益会計と社会福祉法人会計ではP/Lが異なってくるので注意が必要となります。
3.財団法人に自社株を寄付した場合、相続税の節税効果があるか。
特にオーナー経営者が自社株を提供して財団法人を設立するのは、寄付により相続財産を減少させる効果と、安定株主対策という2つの目的で自社株対策として活用されています。
ただし、自社株対策において活用できる、税制上、優遇制度のある財団法人は、公益財団法人及び非分配型の非営利型一般財団法人に限られます。
(ただし、親族役員数を全役員数のを1/3以下にした場合、措置法66条によりみなし相続財産の規定が適用される可能性があります。この場合、非課税となるのは公益法人及び非営利法型一般財団法人に限られません。)
公益目的事業のため必要な金額は、公益法人特別限度額と呼ばれ、公益認定等ガイドラインにおいてみなし寄付金として認められた金額とほぼ同じです。
この公益法人特別限度額は(その金額がみなし寄付金を超える場合は、そのみなし寄付金に相当する金額)が損金に算入されることから、実質非課税となりました。(参考 社会福祉法人は50%か200万円のいずれか多い金額)
公益法人に対する公益認定は、公益認定等委員会が行います。
公益認定要件
- 経理的基礎条件
- 収支相償要件
- 公益目的事業比率要件
- 遊休財産要件
- 会計監査人要件
例
経理的基礎 外部監査必須
費用損失が1億円以上 監事の内税理士又は公認会計士が務めること
会計監査人 損益計算書の収益の部1,000億円以上
損益計算書の費用及び損失の部の計上が1,000億円以上
貸借対照表の負債の部の計上の合計額が50億円以上