会計と税務
NPO法人の会計
NPO法人の義務のひとつとして情報公開があります。広く一般に対して法人の活動を理解してもらうため、また、会費や寄付金を提供してくれた人に対して、資金の使途を報告することは当然であり、報告を通じて十分な理解や同意が得られるならば次年度以降の資金の収集にもつながります。
そのため、一定のルールに従った会計処理が法人には求められます。
会計処理方法
現状においてNPO法人の会処理方法としては、おおまかに3つあげられます。
- 公益法会計(大規模法人)
- 企業会計(中規模法人)
- 簡易な会計処理(小規模法人)
いずれの場合も一度採用した会計処理の基準は、合理的理由がない限り変更は認められておりません。
一般的に、多いのが2.企業会計にならって複式簿記を採用するケースといえます。
「正規の簿記の原則」に従い適正な会計処理が重要となります。
NPO法人の会計原則
NPO法では第27条において会計原則を以下のように定めております。
- 正規の簿記の原則
正規の簿記とは記録の網羅、検証、秩序の3条件を充たすことをいいます。
複式簿記は会計簿から誘導的に計算書類を導き出せるので、単式簿記よりも複式簿記を採用するのが望ましいでしょう。 - 真実性・明瞭表示の原則
計算書類(活動計算書及び貸借対照表をいう。)及び財産目録は、会計簿に基づいて活動に係る事業の実績及び財政状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものとすることとします。 - 継続性の原則
法人は一度採用した会計処理の方法は、正当な理由のない限りむやみに変更することはできません。
処理方法を変更すると各決算毎の比較が困難になったり、意図的な会計操作が可能になるため、偽りの情報公開となりNPO法人の目指す社会的信用が得られなくなります。
会計書類
NPO法人が事業報告書とともに、毎事業年度必ず作成、提出しなければならない計算書類には財産目録・貸借対照表・収支計算書が揚げられます。
収支計算書は、資金の増加及び減少を示します。
資金の範囲には以下の3つが考えられます。
- 現金預金
- 現金預金のほか、借入金等を除く短期金銭債権債務
(未収金、前払金、未払金、前受金等を含み、短期借入金、短期貸付金を含めません。) - 現金預金のほか、短期借入金、短期貸付金等の短期金銭債権債務も含めた正味運転資金
NPO法人における非課税
NPO(特定非営利活動)法人とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする活動が主体です。
極めて公益性の高い法人なので、社会福祉法人と同様、税制面でいくつかの優遇措置が設けられています。
法人税の非課税
収益事業を行う場合のみ、法人税が課税されます。
ここでいう「収益事業」とは、法人税法上で定められた次の特掲事業(34種)のことをいいます。
ただし、NPO法人については、特掲事業から除かれる事業もありますので、収益事業の開始届出を提出する前に事前の十分な確認が必要です。
参照 特掲事業
1.物品販売業
2.不動産販売業
3.金銭貸付業
4.物品貸付業
5.不動産貸付業
6.製造業
7.通信業
8.運送業
9.倉庫業
10.請負業
11.印刷業
12.出版業
13.写真業
14.席貸業
15.旅館業
16.料理店業その他の飲食業
17.周旋業
8.代理業
19.仲立業
20.問屋業
21.鉱業
22.土石採取業
23.浴場業
24.理容業
25.美容業
26.興行業
27.遊技所業
28.遊覧所業
29.医療保険業
30.技芸の教授
31.駐車場業
32.信用保証業
33.無体財産権提供業
34.人材派遣業
事業税及び事業所税の非課税
道府県における事業税は、法人税と同様、収益事業の収入又は所得にのみ課税されます。
市町村における事業所税は、地方税法において、NPO法人を含む公益法人等には非課税の規定が設けられておりますので、課税されません。
法人住民税の非課税
法人住民税は都道府県民税と市町村民税があり、いずれも法人税割と均等割に分けられます。
法人税割は法人税額を基に税額を算出するため、収益事業を行わない場合は課税されません。
これに対し、均等割は収益事業を行うかどうか、また所得の有無にかかわらず、一定額を原則納付する義務があります。
ただし、収益事業を行わないNPO法人を含む公益法人等に対して、各都道府県市町村においては、期日までに減免申請書等を提出することにより課税されません。
印紙税
NPO法人が発行する領収証及び受取書は、収益事業に関するものであっても、金額にかかわらず印紙税はかかりません。
ただし、契約書については免除の規定はないので、課税文書とされ印紙税がかかります。
登録免許税
NPO法人を含む公益法人等の、法人登記に関する登録免許税は非課税となります。